IT移住マニュアルも、いよいよ佳境に入ってまいりました。今回のテーマは一番のヤマ場とも言える就職活動と面接についてです。さすがに日本とは多少勝手の違う外国での就職ですから、いろんなドラマがあなたを待っていることでしょう。面接官の英語の速射砲に悩まされたり、予想もしない質問にたじたじになったり、いつまで待っても返事を寄越さない先方の会社に愛想の一つもつかせたくなることもあるでしょう。だからといって必要以上に身構えることはありません。これはあなたにとって、人生初の海外での就職活動なのです。楽しいこと、辛いこと、そのすべてがかけがえのない一生の思い出になるはずです。一瞬一瞬を大切に、楽しんでいきましょう。
1.就職活動前に必要なもの
前回の繰り返しになりますが、就職活動に入る前に、最低限次のものは揃えておかなくてはなりません。
- オーストラリアの永住ビザ
- 一定以上の英語力(TOEIC800点相当)
- 移住資金(独身者で100〜200万円あればOK)
この三つが揃って、はじめて就職活動のスタートラインに立ったと言えるでしょう。その他、早い段階から推薦人(Referee)探しも是非やっておきたいものです。
オーストラリアで就職する場合、通常は推薦人が必要となります。なぜならこの国の多くの企業は、書類選考も面接もクリアして、いよいよ最終段階になった時の確認作業として、「推薦人への直接問い合わせ」を行い、求職者が本当に使える人材であるかどうかを最終的に判断するからです。推薦人には、以前働いていた職場の上司や同僚がなるのが一般的です。
私の経験から言うと、IT業界への就職の場合推薦人が2名必要です。できればそのうち1人には推薦状(もちろん英語)を書いてもらいましょう。そうしておくと、その後の就職活動にかなり余裕が出てきます。私事になりますが、昨年就職活動を始めた時、私の推薦人は1人しかいませんでした。その後就職活動が佳境に入った時、就職エージェントから「推薦人がもう1人必要」と言われて、日本にいる上司に慌ててお願いしたこともあります。後でドタバタしないためにも、推薦人は2人用意しておきましょう。
これから後は、いよいよ就職活動開始です。
2.まず、自分の市場価値を知る
自分の市場価値というと、あまりなじみのない言葉かも知れませんが、要は「オーストラリアの企業が自分の労働にどれ位の対価を支払ってくれるか」という、いわば給料の相場みたいなものです。他の業界については知りませんが、IT技術者の場合、市場価値は主に企業でどの技術領域を何年間経験してきたか(Commercial Experience in Specific Technical Area)によって決まります。給料の相場は技術によって多少違いますが、以下に大体の目安を示します。
| 典型的な役職名(説明) |
市場価値 |
Entry Position (IT系の大学新卒相当) |
35K〜40K |
Junior Developer (特定領域の経験1年程度を有し、上司のスーパーバイズのもとで業務が遂行できるレベル) |
45K〜55K |
Senior Developer, Team Leader (特定領域の経験3〜4年プラス隣接領域の知識を有し、自ら業務を企画し、遂行できるレベル) |
70K〜90K |
Consultant, Project Manager (コンサルティングやプロジェクト全体のマネジメントができるレベル) |
100K以上 |
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左表にみるように、新卒程度で4万ドル弱、経験一年程度で5万ドル前後、経験三年程度で7〜8万ドルというのがシドニーでの大体の相場となります。
就職活動前のできるだけ早い時期から、自分が今どの職種に応募できるのか、どの程度の市場価値を持つのかを理解しておくことは非常に重要です。なぜなら、現在の市場価値を知れば、1年後や2年後に自分がどの位置を狙うのかもおのずと導き出されるし、そのためにはいま何をしたらいいのかも明確になるからです。
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※"K"とは千(Thousand)の意味です。例えば35Kとは35,000ドルにあります。
※上表の市場価値はシドニーの給料を基準とします。他都市の場合、これより相場が多少下がります。
ケーススタディーとして、私自身が去年就職活動を行った時の市場価値を考えてみましょう。当時私の実務経験は、「Lotus Notesの経験1年強、Web開発の経験1年(業界経験は3年)」でした。この場合、現実的に狙える職種としてはLotus NotesまたはWebのJunior Developer、市場価値は45Kから55Kとなります。
私は就職活動で結局11社と面接しました。各社の提示した年俸は最低35K、最低76Kとかなり開きがありましたが、平均すると50〜55Kといったところでした。最終的には65Kもらえる職場に就職できましたから、これは私の経験年数からすればラッキーと言えるでしょう。
3.求人に応募する
次はいよいよ求人広告に応募する段階です。オーストラリアでは、求人情報は通常新聞の求人欄、インターネットおよびシティ雑誌等に掲載されています。この中でイチオシなのがインターネットで、一般に求人情報の質が一番良い(情報が新しい)し、網羅性も一番高いし、検索も容易です。また作業の手間を考えても、新聞広告を見て先方に履歴書をFAXするより、インターネットで応募してメールに履歴書を添付した方がずっとラクですから、これを使わない手はありません。IT業界の場合、使える求人サイトとしては例えば次のものがあります。
募集広告には、会社の業務内容、職務内容、要求される技術の種類、レベル、雇用契約の種類、そして給料が簡潔に記されており、一目見て理解できると思います。但し、広告でやや難しいのが雇用契約と給与の読み方です。
雇用契約には、大きく分けてPermanent(正社員)とContract(契約社員)があります。Permanentの場合、雇用期間は明記されておらず、一般に給料は年俸制で、長期休暇とか福利厚生の対象になります。それに対してContractは、給料は時給制、雇用期間も決まっており(通常数ヶ月)、長期休暇や福利厚生は通常受けられません。IT職の場合、ContractはPermanentよりも給料が高いケースが多いのが魅力ですが、移住後初めての就職であれば、身分保障がしっかりしていて、会社や仕事についてじっくり学べるPermanentの方がお勧めです。但し、ケースによっては、まずContractで職を得てから次にPermanentを狙うという行き方も十分有効です。
| 次に給料の読み方ですが、右表にみるように、日本で言う「年俸」は"Package"とか"Circa(サーカ)"などと呼ばれており、その中にBase Salary(基本給)やSuperannuation(企業年金)、場合によってはボーナスなどが含まれていると考えれば良いでしょう。
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給与パッケージのうち、確実に自分の手取りになるは税引後の基本給だけです。企業年金は日本と同様天引きされ、高齢になってからでないと受給できません。ですので、労働の対価がいつどれだけもらえるかは、よく把握しておく必要があります。
4.履歴書を書く
求人に応募する時に絶対に必要となる履歴書。オーストラリアでは、履歴書はCV(Curriculum Vitaeの略)と呼ばれています。
一言で履歴書と言っても、IT職の場合、基本的には以下の三種類の書類が必要になると考えてよいでしょう。
- (1)カバーレター
- (2)履歴書
- (3)履歴書の詳細版
まず、(1)カバーレター(サンプル)ですが、これは履歴書の冒頭に添付するもので、「私は何月何日に○○新聞の求人広告に出ていた××という職種に応募します。詳しくは同封の履歴書をご参照ください。連絡先は下記の通りです」という内容を記した簡単なレターです。
次に、(2)履歴書(サンプル)です。英文履歴書の場合決まった書式はありませんが、書くべき内容と順序は大体次のように定型化されています。
- Objective(応募職種名)
- Work Experience(実務経験)
- Education, Qualification(教育・資格)
- Referee(推薦人)
上記のうち特に重要なのはObjectiveとWork Experienceで、履歴書の成否はこの二項目にかかっていると言っても過言ではないでしょう。推測するに、この二項目だけ見て面接するかどうかを判断している人事担当者も決して少なくないでしょう。Objectiveには「どの仕事に応募するのか」を明確簡潔に書くこと、またWork Experienceには「自分がその仕事をするために必要な経験を積んできた」ことを、数字(経験年数等)を駆使して説得力を持たせて書くことが肝要です。書き方は人それぞれですが、例えばサンプルのように、職務経歴の要約(Summary)を箇条書きにするのも一つの方法でしょう。
その他、日本からの移住者の場合は雇用主がビザについて心配することもありますので、Visa Statusという項目を設けて永住権取得者だということを明記しておくと良いでしょう。また、その他特記事項(Others)という項目を設けて、仕事には直結しなくても将来役に立ちそうな能力(語学力など)をアピールしておくのも良いでしょう。
最後に、(3)履歴書の詳細版(サンプル)です。これは日本の「職務経歴書」に相当し、履歴書だけでは分からない詳細なレベルの実務経験や能力に関する情報を盛り込みます。IT職に応募する場合、どの雇用主も詳細なレベルの情報を欲しがりますから、詳細版はまず間違いなく必要と考えて良いでしょう。
詳細版には、サンプルのようにこれまで経験したプロジェクトやシステムの概要、チーム構成と自分の果たした役割、開発したプログラムの内容などを書くと良いでしょう。また会社によっては、Skill Ratingといって、自分がどの技術領域(言語、OS、アプリケーション等)でどの程度のスキルを持つのか、自己評価を求めてくるところもあるので、分かりやすく一覧表にしておくと良いでしょう。
5.就職エージェントを利用する
オーストラリアで就職活動する方の大多数は、就職エージェント(斡旋業者)のお世話になることと思います。この国では就職エージェント業が非常に発達していて、求人広告の大部分がエージェントを通して募集されるからです。
エージェントは仕事の紹介、面接のセッティングの他、スキルアセスメント、面接や履歴書の書き方のアドバイスなどもやってくれることが多く、それらのサービスは基本的には無料ですから、利用しない手はないでしょう。もしシドニーでのIT就職を目指すなら、このリストを活用するとよいでしょう。
また、就職活動をしているうちに、コンタクトするエージェントや担当者、面接する会社の数が膨大になってきますので、それらの情報をExcelのスプレッドシートなどで一括管理しておくと便利です。
6.面接する
就職活動の最後の関門、それは面接です。オーストラリアの面接は当然英語で行われますから、最初のうちは多少気構えることがあるかも知れませんが、大丈夫です。この国の面接は概してとてもフレンドリーで、面接官とは対等な立場でざっくばらんに話すことが奨励されているからです。もちろん、時にはシビアなことを聞かれたりしますが、それはあなたがちゃんと業務をこなせるかどうかを判断するためであり、他意はないはずです。私は4年前に日本で就職活動をした時、面接官の中には業務に関係ないような意地悪な質問をする人がいて、不愉快な思いを何度かしましたが、オーストラリアでそういうことは一度もありませんでした。
私の経験から言えば、面接でよく聞かれた内容は次の通りです。
- 前の職場での実務経験
- 応募する職で必要となる技術に関する経験と能力
- 新しい技術(当時ではLotus R5,XML,Multimedia software等)に関する知識と経験
- 志望動機
- 前の職場を辞めた理由
- 自分の長所と短所
- 中長期的な目標(例.3年後に何を目指すのか?)
- 応募する会社のビジネスに関する理解
- 前の職場で、難しい問題に直面したことがあるか?それをどのように解決したのか?
- 前の職場で経験した、一番エキサイティングなことは何か?
基本的には、面接までにこれらの質問に自分の言葉で十分答えられるようにしておく必要があります。不安な場合は、友人に面接の予行演習をしてもらったり、エージェントで発行している面接のパンフレットなど参考にするが良いでしょう。
オーストラリアで初めて就職活動をする場合、よほどスキルのある人は別として通常面接が1回や2回で終ることはないでしょう。恥ずかしながら、私自身も11回も面接したのです。ですから、失敗した面接を次回の成功に結びつけるためにも、面接が終った後に聞かれた内容や答えた内容、反省点などを思い出せる範囲でノートに記しておくと良いでしょう。それは本当に良い記念になりますし、後日就職体験記をホームページ等で公開する際にも役立つはずです。
(付録)私の就職活動体験記等
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